各国の推移
「報道の自由度ランキング(世界報道自由度ランキング)」とは、報道の自由の擁護を目的とする「国境なき記者団」というNGO団体が2002年から発表しているものです。
各国のメディア規制の監視や、世界中で拘束されたジャーナリストの救出を主な活動としていますが、この「報道の自由度ランキング」がとりわけ有名です。
2022年時点で日本は180カ国中71位と、先進国としてはかなり低迷しています。2021年の67位からさらに順位を下げました。ほんとうに民主主義の先進国なのか疑いたくなる順位です。
日本は、69位のケニア、70位のハイチ、72位のキルギス、73位のセネガルに挟まれる形です。
上位にはヨーロッパ諸国が数多くランクインしていますが、アメリカ42位、韓国43位と、いずれも日本より上位に位置しています。
日本では、民主党政権下の2010年に過去最高の11位を獲得していますが、2012年に自民党が政権を奪還してからは順位を下げています。
韓国は、日本よりも順位を落とす期間もありましたが、2017年に文在寅大統領が誕生してからは、45位近辺をうろついており、日本よりも高評価されています。
ロシアと中国の順位はともに低く、とくに中国は2022年時点で180カ国中175位で、ランキング開始時から最下位付近をさまよっています。
ロシアも155位と沈んでいますが、ウクライナ侵攻後の情報統制が十分に順位に反映されているとは言い難く、来年以降さらに順位を下げることが予想されます。
ランキング上位20カ国は以下のとおりです。
圧倒的にヨーロッパの国が多いですが、コスタリカが8位、ジャマイカが12位と中米の2カ国が上位につけています。一方、コロンビア145位、ホンジュラス165位、キューバ173位など、中米の間でもランキングに大きな開きがあります。
2021年時点では、20位以内にアジア及びアフリカの国はありませんでしたが、2022年には東南アジアから東ティモール(17位)、南アフリカからナミビア(18位)がランクインしています。セーシェル(13位)もアフリカですが、インド洋に浮かぶ島国です。
日本の順位が低い理由
記者クラブ制度
記者クラブとは、大手や各地域の有力なメディアの記者しか事実上加盟できないと言われる組織です。国の開く記者会見では、記者クラブ加盟社の記者が優先的に指名されるケースが目立ち、フリーのジャーナリストは質問の機会が制限されています。
国境なき記者団は、この記者クラブ制度を報道の自由を阻害するものだと批判しています。
警察権力や政治権力と癒着して、情報をもらうかわりに権力側の意に沿った報道を行うといったような、あるまじき腐敗構造も指摘されています。
権力におもねるメディアばかりが優遇されているようでは、報道が偏向してしまいます。公平中立な情報を得ることが難しくなってしまうのです。
特定秘密保護法
第二次安倍政権下の2013年に、与野党の合意が得られていないのにもかかわらず、強行採決されたのが特定秘密保護法です。
この法律が施行されたことで、行政機関が「特定秘密」と定めた情報について、その情報を持つ人間を公的に調査することが可能になりました。「特定秘密」情報を持っていると疑われる人間は、プライバシーに関わる領域も含めて徹底的に調査されうるのです。場合によっては罰則も課すことができます。
「特定秘密」の対象は、「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関わる情報だとされていますが、その線引きはかなり曖昧で、行政機関のさじ加減であらゆる情報を「特定秘密」にすることが可能です。
「特定秘密」を知ろうとすることも処罰の対象になっており、ジャーナリストや研究者、さらには一般人に至るまで、処罰の対象になりえるというのが怖いところです。
国境なき記者団は、この法律も報道の自由を制限するものだとして批判しており、日本の低評価につながっています。
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